今号は4本のニュースを取り上げます。Chromeにクリティカル2件を含む27件の脆弱性修正が公開されたほか、クラウドファンディング「Makuake」ではサービス内のメッセージ機能を悪用したフィッシングが確認されました。まずは全端末のブラウザ更新確認を。あわせて「サービス内のメッセージだから安全」という思い込みへの注意喚起と、顧客情報へのアクセス権限の見直しを進めてください。
NEWS 01
Google / Security NEXT | 2026年7月8日(現地時間)
Chromeに脆弱性27件の修正アップデート、最高深刻度「クリティカル」2件を含む
Googleは現地時間2026年7月8日、ブラウザ「Chrome」のセキュリティアップデートを公開しました。WindowsおよびmacOS向けの「150.0.7871.115」「150.0.7871.114」、Linux向けの「150.0.7871.114」で、あわせて27件の脆弱性が修正されています。
修正された主な脆弱性
| CVE番号 |
対象コンポーネント |
深刻度 |
| CVE-2026-15112 |
Ozone(画面表示・入力処理)の Use After Free |
クリティカル |
| CVE-2026-15129 |
Views(GUIフレームワーク)の Use After Free |
クリティカル |
| CVE-2026-15132 |
V8(スクリプトエンジン)の未初期化メモリ使用 |
High |
クリティカルの2件は、いずれも解放後のメモリを使用する「Use After Free」の脆弱性です。このほか23件が2番目に高い「High」と評価されており、上記のV8の問題のほか、「Extensions」「Autofill」「Payments」「WebRTC」などに確認されたUse After Freeの脆弱性が含まれます。
公表時点で、これらの脆弱性が実際の攻撃に悪用されたという情報は確認されていません。ただしChromeの脆弱性は修正公開後に攻撃コードが出回るケースが繰り返されており、更新を先送りする理由にはなりません。
▌中小企業への影響
Chromeは業務PCで標準的に使われるブラウザであり、対象範囲は事実上ほぼ全社です。Use After Free型の脆弱性は、細工されたWebページを開くだけで任意コード実行につながるおそれがあります。ブラウザ更新は「開いているタブを閉じて再起動」しない限り完了しないため、更新済みのつもりで旧バージョンのまま使い続けている端末が残りがちです。
▌推奨対応(今週中に実施)
- →Chromeのアドレスバーに「chrome://settings/help」と入力し、バージョンが150.0.7871.114以降であることを確認する
- →更新後は必ずブラウザを再起動する。「再起動」ボタンが表示されている端末は未完了の状態
- →社内の全端末で同様の確認を行う。管理ツールがない場合はチェックリストを配布して自己申告で集約する
- →Microsoft EdgeなどChromiumベースの他ブラウザも、同系統の修正が順次配信されるため更新を確認する
NEWS 02
マクアケ / Security NEXT | 2026年7月9日
クラウドファンディング「Makuake」でサイト内フィッシング、公式窓口を装うメッセージに注意
マクアケは、同社が運営する購入支援型クラウドファンディングサービス「Makuake」のサイト内でフィッシング攻撃が発生しているとして注意喚起を行いました。第三者が同サービスの窓口になりすまし、同社とは無関係のフィッシングサイトへ誘導するメッセージを、サービス内のメッセージ機能を通じて送信していたものです。
確認されている2つの手口
手口は2系統が確認されています。1つは、攻撃者が会員アカウントを新規に作成し、公式窓口を装ったアカウント名やアイコン画像を設定してメッセージを送る手口。もう1つは、他所から入手したアカウント情報を使ったパスワードリスト攻撃でログインに成功した既存会員のアカウントを乗っ取り、アカウント名やアイコンを変更して公式窓口を偽装する手口です。
同社は悪用されたアカウントの停止と該当メッセージの非表示化を実施し、URLを含むメッセージの送信を一部制限するなどの対策を講じています。あわせて、メッセージ機能を通じて本人確認や個人情報の入力を求めることはないと説明し、今後も手口を変えた攻撃が続く可能性があるとして注意を呼びかけています。
▌中小企業への影響
「サービス内のメッセージだから本物だろう」という思い込みを突く手口で、ECモール・予約サイト・ビジネスチャットなど、メッセージ機能を持つあらゆるプラットフォームで成立します。Makuakeで資金調達や販路開拓を行う中小企業は、支援者や運営を装った誘導メッセージを受け取る側になり得ます。また従業員がパスワードを使い回していると、乗っ取られた自社アカウントがフィッシングの発信元として悪用され、加害側に回るおそれがあります。
▌推奨対応
- →サービス内メッセージであってもURLは安易に開かず、ブックマークや検索から公式サイトへ自分でアクセスして内容を確認する
- →Makuakeを利用している場合は、他サービスと同じパスワードを使っていないか確認し、使い回しがあれば変更する
- →「運営窓口が本人確認や個人情報の入力をメッセージで求めることはない」という原則を社内に共有する
- →自社が会員向けサービスを運営している場合は、なりすましアカウントの作成やメッセージ機能でのURL送信を制限できるか点検する
NEWS 03
ハンズホールディングス / Security NEXT | 2026年7月7日
建設・人材サービスのハンズホールディングス、社内システム侵害でマルウェア感染の可能性
建設事業や人材サービス事業を展開するハンズホールディングスは、社内の一部システムが外部から侵害され、マルウェアに感染した可能性があると公表しました。2026年6月19日8時50分ごろに検知したものです。なお、小売店「ハンズ(旧東急ハンズ)」を運営する企業とは別の会社です。
同社は感染の拡大を防ぐため、感染の疑いがあるサーバーやパソコンをネットワークから遮断し、一部システムは停止した状態が続いています。公表時点で個人情報や機密情報の外部流出は確認されていませんが、外部の専門機関の協力のもと、流出の有無を含めた影響範囲と原因の調査、システム復旧に向けた作業を進めています。
▌中小企業への影響
この事案で注目すべきは「検知から即座にネットワーク遮断へ動けたかどうか」です。マルウェア感染の被害範囲は初動の速さでほぼ決まります。検知の仕組み(ウイルス対策ソフトのアラート監視)と、感染時に誰が何をするかの手順がない企業では、気付かないうちに感染が全社へ広がり、ランサムウェアの実行や情報窃取まで進んでしまいます。
▌推奨対応
- →マルウェア感染を検知した際の初動手順(LANケーブルを抜く・Wi-Fiを切る・報告先)を1枚の文書にまとめ、全従業員に周知する
- →ウイルス対策ソフトやEDRのアラートが「誰に」通知されるかを確認する。通知先が退職者のメールアドレスのままというケースは珍しくない
- →重要データはネットワークから切り離した状態のバックアップを週次で確保する
- →システムが止まった場合にどの業務から復旧させるか、優先順位を事前に決めておく
NEWS 04
九州急行バス / Security NEXT | 2026年7月9日
運転士が予約情報を不正取得し顧客へ私的なメッセージを送信、九州急行バスが謝罪
福岡−長崎間の高速バス「九州号」を運行する九州急行バスは、運転士が顧客の予約情報を不正に取得し、私的に使用していたことを公表しました。運転士は運行管理者を通じてバスの予約情報を取得し、特定の顧客に対して私的な内容のショートメッセージを送信していたものです。
2026年6月24日に顧客から同社への申し出があり、問題が発覚しました。同社は社内調査を実施したうえで顧客に経緯を報告し、謝罪しています。同社は個人情報の取り扱いに関する教育の不足と管理体制の不備があったと説明。再発防止策として、個人情報を扱うエリアへの立ち入りを関連する職員に限定し、教育と情報管理の監督を徹底するとしています。
▌中小企業への影響
外部からの攻撃ではなく、内部の従業員による顧客情報の私的利用という典型的な内部不正の事例です。IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」でも内部不正は上位に位置しています。予約・会員・配送など顧客の連絡先を扱う業種(店舗、サロン、スクール、運送など)であればどの企業でも起こり得ます。1件の私的連絡でもSNSで拡散されれば、企業の信頼は大きく損なわれます。
▌推奨対応
- →顧客の氏名・連絡先にアクセスできる従業員の範囲を棚卸しし、業務上必要な担当者に限定する
- →誰がいつ顧客情報を参照・取得したか、ログや台帳で記録が残る運用にする
- →顧客情報の私的利用の禁止を就業規則や誓約書で明文化し、処分の根拠を整える
- →採用時と年1回以上、個人情報の取り扱いに関する教育を実施する
編集部まとめ
ブラウザ脆弱性・サイト内フィッシング・マルウェア感染・内部不正と、侵入経路の異なる4事案が並びました。共通する対策の軸は「範囲を絞る」ことです。全端末でのChrome更新の徹底、メッセージ経由のURLは開く前に確認する原則の共有、顧客情報へアクセスできる人の最小化。この3点を今週の点検項目にしてください。
参考情報