【インシデント速報】2026年7月28日|あすか製薬で退職者の従業員リスト持ち出し・愛知農済の代表メール乗っ取り・太田市がふるさと納税メールで他人の個人情報を誤記載

2026年7月28日(火)速報

退職者は「持ち出せるデータ」を在職中に手元へためている。退職時のアカウント停止とデータ棚卸しを手順化する。代表・共有メールこそ乗っ取りの標的。全メールアカウントに多要素認証(MFA)を設定する。システムが自動送信するメールは、本文に他人の情報が混入しないか、送信前に必ずテストする。

本日のインシデント(7月24日公表分より)

内部不正・退職者の情報持ち出し

① あすか製薬ホールディングス:退職者が従業員リストを社外へ持ち出し、再就職先の侵害調査で発覚

あすか製薬ホールディングスは2026年7月24日、グループ会社であるあすか製薬の元従業員が、退職時に従業員リストを社外へ持ち出していたと公表した。2025年に退職した元従業員が、在職中に同グループの従業員リストを個人のパソコンで管理しており、退職後もそのデータを再就職先の端末に保存していたという。

リストにはグループの従業員および退職者の氏名、所属部署、役職、社員番号、生年月日、入社年月日、退職年月日が含まれる。持ち出しが判明したきっかけは、元従業員が保存していた再就職先の業務委託先パソコンが第三者に侵害され、その調査(フォレンジック)の過程でリストの存在が確認されたことだった。

フォレンジック調査では、この従業員リストが閲覧されたりダウンロードされたりした痕跡は確認されていない。同社は連絡が取れる関係者に対し、書面などで個別に連絡している。

中小企業への影響

「退職者による情報持ち出し」は、外部からの攻撃より発覚が遅く、しかも自社では気づけない。今回も、持ち出し先の会社が別件で攻撃されなければ表面化しなかった。従業員名簿は攻撃者にとって、なりすましメールや標的型攻撃の材料になる「名寄せの起点」だ。中小企業では業務データを個人PCで管理させがちだが、その一台が退職とともに社外へ出れば、会社の管理はそこで途切れる。

推奨対応

  • 退職手続きにアカウント停止・貸与端末回収・私物端末内の業務データ削除確認をチェックリスト化し、退職日当日に実施する
  • 従業員名簿や顧客リストを個人PCのローカルに置かせない。共有はアクセス権付きのクラウド上で行い、ダウンロードを制限する
  • 入社・退職時に情報の取り扱いに関する誓約書を取り交わし、持ち出しが判明した際の対応方針をあらかじめ定めておく
📌 このインシデントは継続追跡中です(詳細記事は順次公開予定)

不正アクセス・メールアカウント乗っ取り

② 愛知県農業共済組合:代表メールアカウントが乗っ取られ、スパム送信の踏み台に

愛知県農業共済組合(愛知農済)は2026年7月24日、同組合の代表メールアカウントが不正アクセスを受けたと公表した。乗っ取られたアカウントは、同組合のメールアドレスを送信元とする大量の迷惑メールの送信に悪用された。

同組合はパスワードを変更して不正アクセスを遮断済み。同組合を送信元とする心当たりのないメールが届いた場合は、本文中のリンクや添付ファイルを開かず、メールごと削除するよう呼びかけている。

中小企業への影響

代表アドレスや「info@」などの共有メールは、担当者が入れ替わっても使い続けられ、パスワードが長く変わらないまま放置されやすい。乗っ取られると、取引先には「いつもの相手からの正規メール」として届くため、自社が加害者側になり、フィッシングやマルウェア拡散の踏み台にされる。信用毀損の実害は、情報が漏れるより早く広がる。

推奨対応

  • 代表・共有メールを含むすべてのアカウントに多要素認証(MFA)を設定し、パスワードのみのログインをやめる
  • 共有アドレスのパスワードを推測されにくいものへ変更し、担当変更・退職のたびに更新する運用にする
  • 送信済みトレイに身に覚えのない大量送信がないか、送信数の急増をメールサービスの管理画面で定期的に確認する

個人情報漏えい・システム不具合

③ 太田市:ふるさと納税の自動メールに、システム不具合で他人22人分の個人情報を誤記載

群馬県太田市は2026年7月24日、ふるさと納税の寄付者へ送ったメール本文に、無関係の他の寄付者の個人情報が誤って記載されていたと公表した。2026年6月29日、ワンストップ特例のオンライン申請手続きをした寄付者22人に対し、寄付管理システムから受領完了メールを自動送信した際、不具合が発生したものだという。

メール本文には、受信者本人だけでなく、同じ22人分の氏名、住所、寄付年月日、寄付金額が誤って記載されていた。同日、メールを受け取った寄付者からの指摘で判明。翌30日、対象の寄付者へメールで説明と謝罪を行い、誤送信したメールの削除を依頼した。

中小企業への影響

予約システム、EC、会員管理などから自動送信されるメールは、いったん流用や差し込み設定を誤ると、送信ボタンを押さなくても大量の個人情報を一斉にばらまく。人手の誤送信より発見が遅れやすく、受信者に指摘されて初めて気づくことが多い。差し込み項目(宛名・注文内容など)の設定は、システム更新のたびにずれる前提で確認すべきだ。

推奨対応

  • 顧客へ自動送信するメールは、テンプレートやシステムを変更したら、本番前にテスト送信して差し込み内容が正しいか目視確認する
  • 1通のメールに複数人の個人情報が入る設計になっていないか、テンプレートの差し込み項目を点検する
  • 誤送信が起きた際の連絡・削除依頼・記録の手順をあらかじめ決め、発覚から報告までの時間を短くする

編集部まとめ

今日の3件は、外部からの高度な攻撃ではなく、退職者の手元・共有メール・自動送信という「社内の日常」に潜むリスクだ。退職時のデータ棚卸し、全メールのMFA、自動メールの事前テスト。いずれも新しい投資は不要で、手順を決めて回すかどうかだけの差である。攻撃を防ぐ前に、まず自社の運用の穴を今日ふさぎたい。

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